これは渚の体験談を元にした再現だ。
それは去年のクリスマスにハート城で行われたパーティーでのこと。
「まさか、王子のみならずオレらまで呼ばれるなんてねー」
既に酒を通した千鶴が意気揚々に声をあげる。
「千鶴、酒臭い」
「だってこんな高級なワインなかなか飲めないんだしさ。 渚も飲んどいた方がいいよ?」
「ワインだけでは身体によくないですよ」
そう言って持って来た料理を千鶴に差し出すのは奏真。
「あ、奏真さん。 もう一本ワイン開けてもいい? 弥彦さんもはいどうぞ」
「う、ぉお…かたじけない」
「……」
さっきから進めるまま、
ワインを飲み干す弥彦の変化に嫌な予感しかしない。
「シロくんは飲まないのー?」
「……」
「うわ! 無視されたーー。 オレ、肉に負けたーー」
「……」
「ま、負けた!? それは一大事。 ここは俺も…!!」
完全、酔っ払いのからみ以外
何ものでもない二人のオーバーなリアクション。
「渚はまだ、おこちゃまだからお酒は早いんだよねーー」
「なっ…」
「渚。 反応する方がアホなんちゃいますか」
「わっわかってるけどさ」
「シロくん酷!!」
「チッ、シロ。 あの二人どうにかしてよ」
「どうにもせんとほっとくのが一番…」
頼りにならないメンツばかりで頭が痛い。
吉太郎を含めた女王と王子は同じテーブルにつきながら、
まるで違う世界のようにワインを楽しんでいる。
「なーぎさ!」
「……」
それに比べてこのていの低い場はなんだろう。
いつも酔っぱらってるとも言える千鶴の態度は本当に酔っぱらったことで
かなりテンションが振り切っている。
「なーぎさあーーー」
耳元で叫ぶ千鶴は返事をしないと永遠に呼び続けそうだ。
「……黙らないと刺すよ」
脅してやろうと腰にさした刀の柄に手をかける。
だけど、それはさして効果が見られず千鶴は渚を指さして大笑い。
その変わりに反応を見せたのは隣にいる…
「喧嘩に刃物ならんぞおおおおお!!」