クリスマスSS(ショートストーリー)

 

「……」

意味のわからないネーミングに
ついついリアクションを忘れる一行。

「…なるほど」
それに比べて
奏真は全てを理解したようにうなずいた。


「…? どうかしましたか?」

予想とは違う周囲の反応に首をかしげる。


予想とは違う周囲の反応に首をかしげる。


本来なら「わお!これはすごい!」とか「excellent!」とかとか
あっても可笑しくないのに。
 

「えっと? ごめん、奏真さん…」

怪訝な表情を浮かべた
渚が助けを求めるように奏真を促した。


「…雪だるまと言うのはこの器のことでしょう。
 元々不思議な形だなとは思ってましたが、
雪だるまという単語に納得しました」

シチューの器に手を添えた奏真を皆で見て、深く頷く。
ただ、理解はしたようだけれど皆納得はしてないようで。


「雪だるまには見えないよこれ」
引いた渚の目が毒矢のごとく舞花の胸に突き刺さる。

「み、みえますよ! ね? 白銀さん!」

「……。」

「ええっ…ち、千鶴さんっ」

沈黙の否定をした白銀から千鶴に助けを求めても。
「うーん…。 これは。 雪だるまかな…」


煮え切らないその言葉に希望をなくす。

 


「……せっかく、味以外でも楽しんでもらおうと思ったのに」

 


「まあまあ、雪だるまだろうとなかろうとシチューはシチューでしょ?」

慰めにもならない言葉が部屋に響く。

 

空気の読めないその声に辺りが鎮まった所で食事は始まった。

 

 

□ □ □ □ □ □

 

 

「どうして突然雪だるまなん…?」

意表を突いた白銀の質問に食事をしていた舞花の手が止まる。


「そういえば、そうですね?」


「暇だったんじゃねーの?」


犬尾の言葉にカチンとは来るものの
強ち間違っていないために言い返せない。


その変わりに出て来たのはもうすぐあるイベントのことだった。

「…クっクリスマスですよ!
明日はクリスマスなのでその雰囲気だけでも楽しめたらなって言う…」

 

我ながら苦しい言いわけになすすべもなく。

 

「暇やったんやな…」

「はい…」

あっさり見抜かれた白銀に観念して肯定した舞花だった。

 

 

「もう、クリスマスか…」

それを聞いた渚が重々しくその単語を口にする。

 


「ナギ、忘れてた?」


「いやー…別に。
 ただ、去年の弥彦と千鶴の暴走思い出したら憂鬱だなあとおもっただけ」

自棄に嫌味ぽいところが疑問を呼ぶ。


「去年って…何かあったんですか?」


「ええ、去年はハート城でクリスマスパーティーがあったんですよ」


「クリスマスパーティー?」


舞花のみならず、犬尾も揃って首をかしげるのを見て千鶴が口を開く。


「舞花ちゃんと犬尾ちゃんはまだいなかったしね。
女王サマの気まぐれで開いたパーティーだったんだけど、

楽しかったよね? 渚?」


「そう思うのは弥彦と千鶴くらいだろうね」

 

盛り上がったと述べる千鶴に反して冷たい渚の感想。

 

「奏真さんと僕で後片付け大変だったんだから」

「後処理はなかなか骨が折れました」

 


その言葉に何かあったなと思う予想は的中した。

 

 

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